伝統集落に住む|インドネシア、共同体の暮らし方
インドネシア。
赤道にまたがる1万3千もの島々。
西から東まで5000kmという距離は、アメリカ東西両岸と同じくらい。
300もの民族、200もの言語。
宗教もイスラム教だけじゃなく、キリスト教もヒンドゥー教も仏教も。
一つの国とは思えない。多様性こそがこの国の特徴。
それは、民家・集落の形も例外ではなく、地域によって様々。
島の交通は不便だから、スクーターをレンタル。大自然の中を走りながら、点在する集落を訪問して周るのが楽しい。
フローレス島 ガダ族
東西に細長いフローレス島。
真ん中あたりが、ガダ族の暮らす地域。
山に囲まれた村々は、静かで見晴らしが良く、なんだか映画の中に入り込んだかのよう。
ガダ族の集落は長方形の広場を取り囲む形で各家が並ぶように配置されている。村ごとに装飾や材料に細かい違いがあるけれど、家の基本は茅葺のどっしり屋根(寄棟)で高床式。広場側が入り口で縁側も兼ねている。
窓が小さいので室内は日中でも薄暗い。村を歩いて感じた様子だと、子供たちは外で遊んでいるし、大人たちも縁側に座って時間を過ごしていることが多かった。
窓をもっと大きくしたら良いのにと考えて、ふと気付いた。ここには窓ガラスが無い。(当然だけど。)
居間はあるけれど、明るくて風の抜ける縁側が、この家では一番。
スラウェシ島 トラジャ族
スラウェシ島の南西部。
トラジャ族の住居は船型の屋根が特徴。その昔、彼らの祖先が船で海を渡り、この地に辿り着いたことに由来している。
村はどこだ?と探しながら走っていると、田んぼの中に現れる大きな船。
思わず「あったー!!」っと叫んでしまう。
トラジャ族の集落は、一本の通路を中心として、両側に建物が並ぶ形になっている。片側に大きな居住用の建物、その向かいに小さな穀倉用の建物がそれぞれ対になって配置されている。
トラジャ族の家も窓が小さく、しかも屋根が大きい為、光が入りづらく、室内は薄暗い。
高床式の床上にあたる室内に居るより、床下のピロティ部の方が居心地が良さそう。村人たちもよくそこに座っていた。
トラジャ族だけでなく、インドネシアの伝統家屋には、高床式で、屋根裏の空間が広いのものが多い。
床下、床上、屋根裏の3層をそれぞれ、地下界、地上界、天上界とする観念がある。一つの住まいを宇宙の縮図とする考え方。
本来の彼らの宗教はアニミズムだったけれど、今ではキリスト教が広まったと聞いた。それでも伝統家屋の形が残っているということは、彼らの中にアニミズムに基づく習慣が残されているということなのだろう。
集落の暮らし
集落の暮らし。
外の文化が入ってきたりして、少しずつ変わっていく部分はあるけれど、守られているのは共同体の意識と風習。彼らのアイデンティティ。
鍵の無い入り口、ガラスも何もない窓は、戸締りができない家。留守をするときは、近所に任せる。
誰かの家を新しく建てる時は、村の人たちが手伝う。
そして報酬は、お金では無くバッファローや豚。家の前に飾られたバファローの角や豚の頭蓋骨はその家の財力を示す。
畑や家畜小屋、井戸やトイレも、家々の間にあって、何軒かで共同。
伝統的なお祭りは今でも暮らしの中で重要な位置付けにある。
村を上げて盛大に行われる葬儀や、村の中心にある先祖のモニュメントは、故人が集落を見守っていてくれるという考え方の証。
ひとりひとりが、その集落の一員として、過去から未来に続く一族の一員として、生きている。
世代が変わったら、集落の暮らしはどんな風に変わるんだろう。
子供たちに、
「君たちの文化は、とても素敵だから、これからも守ってね。」
なんて言ったら
「知らねーよ。俺だってiPhone 欲しいよ。」
とか言われそうだけど、