宇宙都市オーロヴィル|お金は要らない?エコビレッジの暮らし方

その場所への道すがら、手入れされた緑が少しずつ増え始め、車の量が少なくなる。
逆走、追い抜き、クラクションの喧騒の道が、木漏れ日の心地良い並木道に変わる。
スクーターに跨る西洋人と幾度もすれ違いながら、辿り着いた。

南インドにある世界最大級のエコビレッジ。オーロヴィル(Auroville)。

1968年、荒れた大地に木を植える試みから始まったこの都市。
UNITE、SUSTAINABLE、GIFT ECONOMYといった理念のもと、まちづくりが始められ、今では世界各地から人々がやってきて、ここで暮らしている。

Dawnfire
写真はネットから拝借  http://www.auroville.org

ー「住民はお金が無くても生活できる!?」
ー「銀河(ギャラクシー)をイメージした都市計画」
ー「信念や政治、国籍を超え、平和と調和の下に住むことの出来るユニヴァーサル・タウン」

いろいろと面白そうなことが謳われている。
ここにはどんな暮らしがあるのだろう?
2週間程この街に滞在し、様子を見てみることにした。

自立したコミュニティ


オーロヴィルの中には、幾つものコミュニティがあり、それぞれに数十人の人達が暮らしている。各コミュニティがそれぞれ生活を回し、役場や図書館などの公共機能はひとつを共有している。

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緑に溢れた静かな環境の中に散らばるコミュニティ。
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土着的な建て方をされた家もあれば、モダンな建物もある。
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日本風のセンスが取り入れられた建物も。

滞在中、オーロヴィルの中央自治よりも、コミュニティのイニシアティブを強く感じた。全体としての基本的な方針を同じくしてはいるものの、それぞれが独自のスタンスを持ち、お互いの意義や価値観を尊重し合っている。
例えば、木を植え緑を増やすことを一番の目的としているコミュニティもあれば、子供たちの教育に重点を置いている所もある。
食べ物に関しても、ヴィーガンで統一していたり、乳製品を自分たちで作っているところもあったり。

それぞれが頻繁にマーケットやワークショップを催し、コミュニティ同士の、もしくは外部との交流を取っている。

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小さなサタデーマーケット。コミュニティ内で採れた野菜や自家製食品など。誰でも遊びに行ける。

オーロヴィリアン


オーロヴィルの住民のことをオーロヴィリアンという。

ここに来れば誰でもオーロヴィリアンになれるというわけではなく、目的や役割が必要。
例えばヨガのスキルがある人は、まず数年ここでボランティアとして暮らし、その期間が過ぎたら審査を受け、通過した場合インストラクターとしてオーロヴィルに住むことができる。という具合。

コミュニティのマーケットを訪ねた時、天然酵母パンを作っているオーロヴィリアンに出会った。

彼の生業は毎日25個、シンプルなバゲットを作ること。
そのうち20個は販売し、残りの5個は自分たちのコミュニティで食べる。
シンプルだけれど追求されたパンは本当に美味しくて、翌日はパン作りをしている工房まで出向き、釜から出てきたばかりのパンを購入。

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焼きたてのバゲット。外はカリカリで中はしっとり。何もつけなくても美味しい。

オーロヴィルでの彼の役割は美味しいパンを作ること。
ここでは彼のように自分の特技を活かす魅力的な人たちが暮らしている。

都市として目指すオーロヴィリアンは5万人。それにも関わらず、現在の住民は2,500人ほど。この規模に留まっているのは決して希望者が少ないからではなく、登録への審査が慎重だから。
誰でも住めるようなオープンな場所にして、単純に規模を大きくするのではなく、適性を見極めてから人を受け入れている様子だった。

高い水準を誇る芸術と教育


オーロヴィルでは毎日のように催しがある。
立派なオーディトリアムやホールがいくつもあり、伝統音楽からジャズまで様々なコンサートがひっきりなしに開かれている。
オーロヴィルが製作した映画や、世界各国のドキュメンタリー映画が、毎日のようにどこかで上映されている。
それらはすべて無料。掲示板で告知が出ていて、誰でも確認出来る。僕たちも、何回かコンサートを楽しんだ。

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定期的に無料で開催されるコンサート。大ホール級の大きさの劇場。
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イベントやワークショップのフライヤーが並ぶ掲示板。各所にある。

パン屋だけでなく、数多くのアーティストや建築家、職人が移り住んできている。そして彼らは、ワークショップを開いたり、作品を売ったりしている。
イベントで見かけたのは、伝統舞踊のお披露目をする西洋人の女の子、見守るインド人女性の先生。みっちり練習している様子だった。
南インドのオーガニックコーヒーを焙煎するオーロヴィリアンがいて、カフェではそのコーヒーを陶芸家オーロヴィリアンのお洒落なカップで出す。

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Marc’s cafe のサウスインディアンコーヒーとエアロプレスコーヒー。好きな豆を選んで淹れてもらえる。

インドの外から来た人が、インドの中にある価値を見つめ直す。そんな良い例だと思った。そして、そのどれもが物真似でもいい加減でもなく、質の高いものだった。

ギフトエコノミーと木を植える取り組み


ジェシカは今日、予定があって幼い娘を見ていることができない。今日ちょうど時間のあるトムが、娘の世話を引き受ける。ジェシカはそのお礼を直接トムに返すのではなく、また別の日に人手の足りないディエゴの畑を手伝うことで繋げる。

贈与経済(Gift Economy)の考え方。

*Shadhana Forestというコミュニティを訪ねた時に、そこのオーロヴィリアンが説明してくれた。
直接の見返りを求めず自分ができることをする。その代わり自分の必要なことは必要な時に廻ってくる。
物や行為をお金で売り買いするのではなく、贈り物としてパスをまわす。

金銭のやりとりを無くすことがオーロヴィルの一つの目標でもあり、Shadhana Forest ではコミュニティ内の生活に贈与経済の考え方を取り入れていた。

ここでの一番の目的は森林再生。植林活動を通じて豊かな森を取り戻すこと。木を植えるという行為が日々の営みの一部に組み込まれていて、多くのボランティア達がここで暮らしながら、活動している。多い時では100人を超えるボランティアが来る時もあるそう。

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植林の説明。話を聞いているのは皆ビジター。毎週一回こうして取り組みの紹介をしている。
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竹で作られた建物に皆が集まる。ヴィーガンの夕食も無料でふるまってくれた。

とにかく関心する人や取り組みが盛り沢山のオーロヴィル。居心地の良さもあって、もっと時間を過ごしたい場所。logotatsuya-01

→一歩引いてオーロヴィル に続きます。

*Shadhana Forest : 厳密にはオーロヴィル外のコミュニティ。隣接した場所にありここの情報はオーロヴィル内で得られる。

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