クジラの壁|捕鯨の話はタブー?

あまり日本では話題にならないかもしれないけれど、
海外を旅していると、「捕鯨」の話をすることが度々ある。

「日本は今でもクジラを食べているんでしょ?」
「あんなに頭の良くて美しい生き物なのに…」
こんな意見がとても多い。

特に私たちは、環境を意識した人たちと出会うことが多い。WWOOF、持続的農法、パーマカルチャー、エコな家づくり、持続可能なライフスタイル。

えてして環境問題に関心が高い。

そうした人たちとは、気が合って多くの価値観を共有できるのだけれど、こと「鯨を食べる」については、食い違う。
むしろ積極的に反対される。

「でも日本では古くから鯨を食べている歴史があるんです」
「鯨を食べるだけでなくて、伝統や文化になっているんです」
私たちは一生懸命、説明するんだけど、手応えはない。
聞いてもらえるだけ良い。取りつくシマのない人もいる。

ぎくしゃくした空気に包まれて、悲しい気持ちでいっぱいになる。
さっきまでお互いの文化や習慣について楽しく話していたのに、どうしてだろう。

 

捕鯨は野蛮だっていうイメージが、意識的に作られているように感じる。
四年前、和歌山県の太地町へ訪れた時のこと。太地町は、古式捕鯨とイルカ漁で有名。映画「The Cove」の舞台になった町。
のどかな漁師町の中を、欧米人の反捕鯨団体がビデオカメラを片手に闊歩していた。
日常を送る住民たちに、四六時中無作法に向けられるカメラ。
彼らの仕事は町の人たちの日常の様子を、クジラを獲る野蛮な人たちとして映すこと。

たくさんの人はそれを真に受けて、「クジラが可哀相、守らなきゃ」って思ってる。
オーロヴィルの映画ナイトでも、The Coveが上映されていたくらい。

愛らしくて、頭が良い生き物は食べてはいけなくて、
醜くて、頭の悪い生き物は食べて良いってこと?

それなら仔羊もふわふわしてて可愛いし、ウサギだって、子ブタだって、生きている姿を見たら、捌いて食べるのは想像つかない。賢い猿や犬も食べる地域だってある。

植物だって、声をあげないだけで、いただく生命にはなんら変わりない。
生命を食べなくては生きていけないからこそ、
生かされていることに感謝をして、いただきますと手を合わせている。
命の重さに順位を付けるのは、ただのエゴじゃないかな。

 

一番悲しいのは、
私たちの育ってきた習慣が相手にとって馴染みのないものだからと言って、否定されること。
私たちの背景にある、脈々と続いてきた文化を尊重してもらえないこと。
犬を食べることを「かわいそう」とも言いたくないし、鯨を獲ることを野蛮だとも言われたくない。

 

まず、目の前に座る人を見つめたいと思う。その人が好きなら、その人を知りたいと思う。どんなに信じられないことでも、その人の大切にしていることなら、理解したいと思う。
そういうもんだと思う。

きっと、私たちにそう思わせる魅力、努力が足りなかったんだろう。
それに、私たちだってちゃんと相手を見つめていただろうか。
原因がどちらにしろ、残念なことだけど、話をそこまで発展させることが出来なかった。
次は、「クジラって美味しいの?」
くらい尋ねてもらえるように、丁寧にコミュニケーションを取ろう!

 

捕鯨の問題は、知れば知るほど複雑。
私たちが挙げたような、文化相違による摩擦だけで解決できる問題ではない。
一時期、外貨獲得の為に、心ない捕鯨をしていたのも事実。
けれど、各地に残る絵巻や唄、踊りや郷土料理…崇拝し感謝してきた文化があるのも本当だと思う。

日本に帰ったら向き合いたい、もっと知りたい。
(お金が貯まったら)文楽も観たいし、鯨料理も食べてみたい、
捕鯨文化の残る地域に行って、話を聞きたい。

The Coveへの反論映画「Behind The Cove」。
とっても観たかったけど、灼熱のインドにいる私たち、、
ぜひ、みなさん観に行って、内容や感想を教えてください。

映画「ビハインド・ザ・コーヴ〜捕鯨問題の謎に迫る〜」

インターネットだけでは、いろんな立場の人の、いろんな意見が交錯していて、
調査捕鯨の実態も、何が真実なのか、よく分からない。
もし、ご意見・情報をお持ちの方、読むと良い文献をご存知の方は、ぜひご教示ください。

参考までに、
太地町でのイルカ漁業に対する和歌山県の公式見解

2 thoughts on “クジラの壁|捕鯨の話はタブー?

  • 2016-04-24 at 1:35 AM
    Permalink

    アマゾン等で入手が可能でしたら、「クジラコンプレックス」(東京書籍)と「イルカ漁は残酷か」(平凡社新書)を取り寄せられることをオススメします。
    少なくとも、公海・南極海での調査捕鯨と、日本近海のそれとは切り離して考えた方がいいかと思います。

    Reply
    • 2016-04-24 at 2:44 AM
      Permalink

      初めまして、コメントありがとうございます。
      お勧めして頂いた本は、帰国次第読ませて頂きます。(取り寄せるのは難しそうでした)
      次に海外の方と捕鯨の話題になった時は、調査捕鯨と近海捕鯨の違いについても言及してみます。

      ネコさんのHPは、捕鯨について調べていた時に拝見していました!
      データベースやリンク集など、参考にさせて頂きました(^_^)

      Reply

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