一歩引いてオーロヴィル|まちづくりを始めること、続けること

今回は魅力的な都市オーロヴィルの気になった点について。

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マスタープラン。web上でこれが都市の姿だと誤解した情報が出ていたりするけれど、これは模型です。オーロヴィルwebサイトより。http://www.auroville.org
インディジナティ : 
オーロヴィルができる以前からその土地に住んでいた人々
オーロヴィリアン : 
オーロヴィルの市民権を持ち、オーロヴィルに住む人々

コミュニティビレッジを作る時にありがちなこと。もともとそこに住んでいた人たちと新しく入ってくる人たちとの間に生まれる溝。暮らし方や価値観の違いによるいざこざが生まれるのは、避けては通れないことだと思う。特に経済力や生活水準のバランスが偏っていたりすると、もはや入植になりかねない。

オーロヴィリアンによるまちづくりの報告会を見に行った。
プロジェクターに映し出されたオーロヴィルの全体図は緑と白に塗られている。
緑が買い取った土地。(オーロヴィルの土地) 白がまだ買い取っていない土地。(インディジナティの村や国有地)
プレゼンターは、緑色の中に虫喰い状に残る白色を指して、説明した。
「この部分はこれから買いとらなければなりません。」
地図を自分たちの色に塗っていくってプロセス自体が、西洋的だなーと思ったけれど、それは計画を進めるためには仕方ないか、と考え直した。

実際、オーロヴィルの場合、お互いの関係は上手くいっている方だと思う。
西洋人が村の商店で買い物をしていたり、スクーターの後ろにインディジナティのおばちゃんを乗せて走っていたりする。
また、インディジナティの人たちの働き先がオーロヴィル内にあったり、子供たちはオーロヴィルが運営する学校に無料で通えたりと、それなりの恩恵を受けている。

写真(1)
オーロヴィリアンをヒッチハイクするインディジナティのおばちゃん。
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オーロヴィル内にある学校。地元/近隣の子供たちが通う。

これだけ大規模なコミュニティビレッジが、長い間続いているのは、両者の関係を保つ努力や工夫をきちんとしてきたからに違いない。

もとオーロヴィリアン


町で出会ったもとオーロビリアンのインド人男性に話を聞いた。

インディジナティだった彼は10代でオーロヴィリアンになった。コミュニティ内で仕事をし、家を持ち、暮らしていた。けれど、十数年そこで生活をした後、今はオーロビリアンではなくなり、近くの町で暮らしている。

ーどうしてオーロビリアンを辞めたの?
「インディジナティの為に働きたくなったんだ。」
もともと自分たちが暮らしていた土地が、オーロビルになったことについては、特に気にしていない様子だった。荒れていた土地に木々を植え、緑を増やし計画的に作られたこの都市に、彼も誇りを持っていた。けれど、彼の言葉から、彼の拠り所がどこにあるのか、想像ができた。

彼は思っていることを続けた。

「それに、昔に比べて(オーロヴィルの)自由が少なくなってきた。ルールが増えた。ここで〜しちゃダメとか規則が増えた。皆ビジネスをするようにもなってきた。」

ーオーロビルはお金無しで暮らせるって聞いたんだけど?

「お金は必要だよ。ガソリンだって無料じゃないだろ?皆なにかしら収入源がある。訪問者も増えたからゲストハウスやレストランも次々出来ているしね。」

確かに生活の保障等はあるけれど、外部との交流がある以上、お金は必要だろう。
先進国の一般的な暮らしと比べたら少額ではあるけれど、実際に多くの人がお金を遣っている。

例えば、
自給的な暮らしをしながら、自分の手で何かを生み出し、それで生計を立てている若者がいた。

一方で、

本国で勤めを終え、悠々自適に年金セカンドライフを送っているおじいさんもいた。

別に自分で貯めたお金を持って、物価・人件費の安い国に移って暮らすのは悪いことではない。
前者の若者のような人たちばかりが集まるところだと、勝手な期待を持っていたけれど、そうじゃなかったということ。オーロヴィルといえど、いろいろな暮らし方の人がいる。

オーロビルの都市計画


マスタープランと比べてみた場合、現状の都市計画は上手くいっているとは言えない。計画では、中心地は下写真のようにIndustrial Zone, International Zone という具合に機能が分けられている。けれど実際は、ゾーニング(エリア分け)された通りに、各コミュニティや施設が機能しているようには思えない。というか銀河を形どったゾーニングは、難しいんじゃないかなぁ。


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銀河をモチーフにしたゾーニング。 オーロヴィルwebサイトより http://www.auroville.org

土地の所有についても、オーロヴィルの土地の中に虫食い状に既存の村が残っていて、コミュニティ間を移動するとき、その村を通る必要があったりする。
それはつまり村の人の生活エリアの中を、オーロビリアンやビジターが通りすぎるということ。

僕たちも滞在中、バイクで幾度も村を通り過ぎた。
先に書いたように、村の人たちはそこまで気にしていないし、むしろ通り過ぎるオーロビリアンをヒッチハイクするくらいなので問題ないのかもしれないけれど、都市計画的には不自然だと思う。

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オーロヴィル内に点在する既存の村。

街の中心に象徴的な建物 (マトリマンディール) を建てているところも、西洋的だと思った。
植民地時代、中心にカテドラル (大聖堂) が建てられ、そこからまちづくりが進められてできた、中南米の街を思い出した。

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この都市の象徴的な建物。中は瞑想の為の空間。宇宙船のような空間を通り、中心には外界と遮断された瞑想室。写真はネットより拝借

自立したコミュニティや高い志しを持った人々が集まり、作られている都市。それでも見えてくる未完成な部分。オーロヴィル側も、自分たちの街を「実験的な試み」と言っているように、未だ課題のあるまちづくり。
現状を見た限り、創始者(マザー)の理念が実際にどれだけ受け継がれているかはわからないけれど、これだけの長い間、これだけ大きな規模の都市を、維持、発展させ、ここまで来たことはそれだけで大きな価値があると思う。

この文を書きながら振り返っているうちに、新しい疑問がまた湧いてきて、また訪ねに行きたくなってきた。2週間の滞在では、まだまだ知らないことばかり。今後のオーロヴィル、どのように変わっていくのか注目していきたい。logotatsuya-01

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