バイーア、愛しちゃった。[後編]|秘境の大地と旅の終わりに
サルバドールから内陸部に向かって420km。
バスで6時間ぐらい走ると、小さな町レンソイス(Lençóis)に辿り着く。
ここは広大な国立公園の中にある町。
シャパーダ・ジアマンチーナ(Chapada Diamantina)という国立公園は、広大で、見所も無数にある。
レンソイスは、国立公園の大自然を楽しむ為の拠点となる町。
やってきた人たちは、この町に滞在しながら、公園内のツアーへ繰り出していく。
出かける場所はたくさんあるけれど、ツアーに行かずに町の中でのんびり過ごすのもあり。
ゆったりした雰囲気の町で過ごす時間は、旅の疲れを癒してくれる。
旅の最後の一週間。帰国を目前にレンソイスでのんびり過ごす日々。
帰国後の予定を考えたり、旅の振り返りをしたり。
夜になったら商店にビールを買いに。
地元の人たちが集う商店。店主のおっちゃんの人柄に惹かれ、僕たちも毎晩通った。
ある晩、いつものように店の前に座ってビールを飲んでいると、僕たちのガイドをしてくれたマルセオ・ルイスがやってきた。
「仕事帰りに一杯やっていこうと思ってね」
一緒に座って飲みながら、ブラジルに来て感じていたことを話してみた。
「ブラジルに来てから、あんまり差別を感じないんだよね」
アジア人の自分たちに対してだったり、外国人の自分たちに対してだったり、差別的な扱いや眼差しはどこへ行っても出喰わすことがある。それは当然のことで、よそ者や馴れない種類の人間に対して寛容になれない人はどこにでもいる。
差別される場面に出会う度、気持ちは落ちるけれど、ある種、もう馴れのようなものがあった。
ブラジルに着いて感じていた、差別のない空気。
そもそも黒人も白人も黄色人も混ざって住んでいるから、歩いていてもジロジロ見られたりはしない。
そもそもみんなが多様だから、自分と違う人がいてもそれが普通。
だからといって他人に無関心なわけではなく、自然体で他者と接する距離感。
その空気感が嬉しくて、ブラジル人の彼に伝えた。
「ありがとう。それはブラジルの良いところかもしれないね。でもそれが全てじゃないかな。やっぱりまだ差別はあるよ」
奴隷として連れて来られた黒人の歴史は、そう簡単に過去のものにはならない。政治にも、仕事にも、普段の暮らしにも、差別はまだあるみたい。
僕たちが見た、多様な人たちが住みやすいブラジル。でもやっぱり暮らしていないと見えない部分があることをマルセオ・ルイスは教えてくれた。
ただの観光客にすぎない僕たちに、ありのままのブラジルを話してくれる彼と出会い、ますますバイーアが好きになった。
またきっと、今度はもっと時間をかけて来よう。
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