ケチから学ぶこと vol.1|初めてのハズレ体験【ドイツWWOOF日記】
最初のホストは、二つ年上のカップル、ベンとヨアンナ。
フィンランド、ドイツ、インドなど、いろんな国でファームステイしながら、有機農法を学び、最近故郷ドイツに帰ってきて自分たちのファームを始めた。
と、プロフィールに書いてあった。
同じ年代だし、話が合うかな?
どんな価値観を持ってるんだろう?
友だちになれるかな?
駅に迎えに来たホストのベンは、愛想が良く、お喋り。
ベンはヨガのインストラクターが副業(むしろ本業?)。
ファームへと車を走らせながら、
「今日はどこから来たんだい?」
「もうすぐ子どもが生まれるんだ」
「君たちはベジタリアン?肉は食べるかい?」
「いまのファームは借りてるけど、新しく自分のファームを買うんだ」
話題がぽんぽん変わり、私たちの応答を待たず、矢継ぎ早に、せかせか話す。
「バナナ箱を探してるんだ!新ファームへの引越しには丈夫な段ボールが要るからね」
と、急にハンドルを切って、スーパーマーケットに入るベン。
会話のキャッチボールが難しいな…と薄々感じ始める。
家で出迎えてくれたヨアンナは、フィンランド人。
ドイツへ留学中にベンと出会ったと話す。
ソーシャルワーカーで難民支援の仕事をしていたけど、妊娠5ヶ月で産休中だそうだ。
ヨアンナは人当たりが良く、フランクな感じ。
(ベンよりも、ちゃんと会話が続く!よかった!)
彼らは、バイエルン地方特有のサンドストーンでできた古い農家を、修復しつつ借りている。
寝室の他にボイラー室や貯蔵室など部屋がいくつもあり、 悠に二十人は暮らせそう。
二人とも忙しいのか、玄関に靴が散乱していたり、階段に埃がたまっていたり…
掃除は行き届いていない。
到着早々、トラクターに乗って、ブタのエサ用の草を集めに。
もう夜7時くらいだけど、サマータイムでまだまだ明るい。
まわりはリンゴ畑や整備された森が続いていて、ドイツの人工的な田舎という雰囲気。
その日の夜、夕食時。 お昼の残り物を頂きながら、明日からのことを相談。
お湯は薪で焚いているので、毎日はシャワーを浴びれないと聞かされる。
冬のために薪を節約しなければいけないのだと説明される。
そんなに汗をかかなければ、大丈夫かな?お風呂は毎日浴びたい派だけど…
でも、自分たちで焚くわけにはいかないので、承諾するしかない。
「一日何時間くらい働くんですか?」と私たち。
「うちは決まってないよ。ここはファームだから、確定的なことは何もないのさ。働く日はいっぱい働くし、働かない日は全然働かないよ」
WWOOFには、週に5日、一日4~6時間という暗黙の最低ラインはある。
ここはドイツだし、常識的な範囲だよね、と了解する。
初日からよぎる不安
ファームの主な作業は、ブタの世話。
朝夕のブタのエサやり、糞の掃除、ブタのエサとなるリンゴ拾い…etc。
あとは、自家用のこじんまりとした菜園があって、ズッキーニ、カボチャ、インゲン豆、フェンネル、ビーツ、パースニップ、人参などが植わっている。
そこの草取りや水やり、収穫など。
初日、朝8時半。ポリッジで朝食を済ませる。
午前中、彼らは出掛ける用事があるそうなので、今日の仕事の指示をもらう。
まずは豚舎の掃除。
歩いて5~10分のところに二ヶ所、ブタを飼っている敷地があり、 どちらも1000平米くらいの広さを、電熱線で囲ってある。
一ヶ所は子ブタたち。子ブタといっても大きさは親ブタと遜色ない子もいる。
もう一ヶ所は親ブタたち。母ブタ三頭と父ブタ一頭。
この父ブタのウーリーがめちゃくちゃ怖い。 イノシシみたいな牙が生えてるし、目つきもどう猛。
しかも、太りすぎという理由でエサをほとんど与えられておらず、常に腹の底から恐ろしい唸り声をあげている。 「もしあの巨体に後ろからど突かれたら死ぬかもしれない。彼から目を離さず、気をつけて」
と言われ、、戦々恐々。
鋤を使って糞を集め、シャベルと一輪車を使って運び出す。
何が大変って、敷地は森を切り拓いた斜面。木の根っこやら穴がぼこぼこ。
まんべんなく広がる糞々。
ベンが出かけてから、二人とも汗だくで頑張ること一時間半経過…
終わりが見えない。。
各豚舎をテキトーに30分くらいで終わらせてと言われていたのに、一向に終わらない。
テキトーに済ましてしまうと、やっていないも同然のクオリティになってしまう仕事だから、ある程度きれいにしたい。
二ヶ所の掃除を終わらせた頃には、すでにお昼を過ぎていた。
ランチ前には、インゲン豆の収穫を終わらさなければならない。
慌てて菜園に向かい、インゲン豆を収穫し始める。
しばらくして、異変に気づく。
豆棚をつたう茎のうち一本だけに、大量のアブラ虫がたかっている。
「これ、ベンに言った方がいいよね」
豆の収穫を半分くらい終えた頃、お昼に呼ばれた。
豆の収穫が終わってないことは気にしてないみたい、よかった。
アブラ虫のことを伝えると早速ランチ後、達哉がベンを連れて一緒に確認しに行く。
アブラ虫を見て、一気に機嫌が悪くなるベン。
問題の一本を、引っこ抜いてしまうしか対処しようがなかったみたい。
帰り際、道にはみ出ていたカボチャの茎を、達哉が踏んでしまった。
急に頭を抱え「Don’t Step on the Pumpkin!」と、ヒステリックに叫び出すベン。
や、八つ当たり…そんな踏んでないし…。
機嫌悪くなるなら教えなきゃよかったと後悔。
午後は豆の収穫を終わらせ、ベンと一緒にリンゴ拾いに向かう。
これが、思ったよりもキツい仕事だった。
リンゴ園は、かなり急勾配なうえ広大。
大きなバケツを一人二つずつ渡される。
かなり下の方まで降ってバケツを満杯にするまで拾っては、肩が抜けそうに重いバケツを抱え、坂を登る。
ベンは早々に、仕事があるからと姿を消した。
大きな木箱をいっぱいにするにはバケツ3杯は必要。
ひたすらロバのように往復を重ね、4箱いっぱいにした。
肩や筋肉のあちこちが痛い。
リンゴ拾いを終え、家に戻る。
かれこれ8時間以上、働いているからクタクタだ。
ベンがおもむろに「今夜は中庭でBBQだ!」と言い出す。
BBQのために、薪やベンチ、テーブルの準備を手伝う。
ベンが、うやうやしく貯蔵庫から肉片を持ってくる。
「これはウチの豚の肉だよ。首肉だから一番美味しい部分なんだ。見てみなよ、この細胞の一つ一つがしっかりと…」と、もったいつけて説明し出す。
「何を飲む?お茶?ビール?」と言われたので、当然「ビール」と答えると、
貯蔵庫から0.5lの瓶を一本だけ出してくる。
それを三人で分ける。 小さなコップに八分目。(え?これだけ!?)
そんなに高いビールなのかな?(4本セットで3ユーロでしたが)
日が暮れ始め、点火しフィンランド式パンケーキを焼き出す。
そこへ、ヨアンナが飛び込んでくる。
「大変!子ブタが脱走しているわ!手伝って!」
火の番をするというベンを置いて、私たちが走る。
子ブタの豚舎に着くと、電熱線のスイッチが外れている。
夕方、餌やりをしたベンかヨアンナが忘れたんだろう。
無事に子ブタを回収し、やっとBBQ開始。お腹がペコペコ。
首肉のBBQは確かに食感がしっかりしていて、美味しかった…ような気がした。
長い長い一日を終え、これから3週間も持つだろうかと不安がよぎる。
まぁ、奴隷のような日々が次の日から始まるんだけどね。
→ケチから学ぶこと vol.2へ続く
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