バイオダイナミック農法 vol.1|Demeter認証とは?【ドイツWWOOF日記】
ドイツ北西部~地方。エッセンやケルンから程近いファーフェルト(Verbelt)。
一見、なんの変哲もない田舎町に見えるけど、実は銀行や行政がオーガニック農業を応援しているという少し変わった土地。
ここら一帯には、オーガニック農家が十ほど連なっている。
約束の前日に、到着時刻を連絡したけれど、返事はなかった。
前回のファームの経験もあり、不安を抱えて電車に揺られる当日。
夕暮れ時、屋根もないむき出しのプラットフォームに降りたった。
階段を降りて、小さな駐車場を覗いてみるも、案の定誰もいない。
空はだんだん薄暗い雲に覆われ、とうとう雨が降り出した。
とりあえず、駅のベンチで待ってみる。
しかし、辺りはどんどん暗くなり電灯がつき始め、人影は減る一方。不安が募る。
隣でバスを待っていた若者に、ファームへ電話をかけてもらうものの、誰も出ない。
iPhoneの地図アプリを開き、ファームの場所を確認する。
4~5kmくらいだから、1時間ちょっと歩けば着くはずだ。
私たちは雨が止むのを待って、歩いてファームへ向かうことにした。
時計はすでに8時近く。やっと小雨になってきたので、歩き出した。
重いバックパックを背負って、えっちらおっちら。
濡れて黒光りする道路。たまに反射する、橙色の街頭と車のライト。
ファームに近づくにつれ、徐々に街頭がなくなり、真っ暗な道をひたすら歩く。
私たちの頭の中では、ベンとヨアンナの思い出が、ぐるぐると旋回していた。
ファーム到着 & ご対面
夜9時ごろ、やっと目的らしきファームにたどり着く。
大きく古い、白漆喰と黒い木材の昔ながらの農家スタイル。
ドアをノックすると、40代くらいの女性が訝しそうに出て来た。
「今日からお世話になることになっていたWWOOFerなんですけど…」
ヘトヘトに濡れぼそった私たち。
「え!?ちょっと待ってね、夫を呼んで来るわ。中に入って」
パタパタと女性は奥へ消え、すぐに夫らしき男性が慌てて飛び込んで来た。
彼が今回のホスト、ウーリー。
「あれ!?今日だったっけ!?駅から歩いて来たの?この雨の中!?」
おっとり柔和な性格そうだけど、今回は焦っている様子。
「ごめんね!連絡のメール、チェックし忘れてたよ。もう、なんて言ったら良いか分からないけど…、本当にごめんね」と頭を抱え出す。
柔らかい物腰のウーリーにホッとして、
「いいえ、私たちの連絡が直前だったのが悪いんです」と私たち。
「まだ夕飯食べてないよね?ここの台所にある食材はどれも使っていいからね、全部オーガニックだよ」
「ベジタリアンじゃないよね?これ、僕が作ったミートソースだからパスタにかけて。ビール飲む?」
「お風呂はこっちだよ、お湯も出るからね。明日は日曜日だから、ゆっくり休んでね」
気を遣って、いろいろ世話を焼いてくれる。
「ぜんぜん気にしてないから大丈夫ですよ」と伝えても、
「だって、一体どうしたら良いのか分からないんだもの…」と途方に暮れたようなウーリー。
今回のホストは、良い人みたい。ほっと胸をなで下ろした。
Demeter認証のファーム
今回のファームの名前は、Hof zur Hellen。
1985年からバイオ・ダイナミック農法を実践している歴史あるファーム。
しかし、13年前に経営難に陥ってしまい、前のオーナーが売りに出した。
そこに、脱サラしてオーガニック農業をしたかったウーリーと友人アレックスが共同で、このファームを買い取ったのだそう。
ウーリーが乳牛と豚を担当し、アレックスが野菜畑を担当。
ファーム自体は約40haくらい。今までWWOOFした中で一番の大きさ。
そして、ファームで採れた野菜やミルク、自家製ソーセージを食べれるカフェを併設している。
周辺には、Demeter、BiolandやNaturlandなどの認証を取得したオーガニックファームが建っていて、大体どこもカフェやレストラン、ショップを併設している。
ファーム同士は、緩やかに連携しているらしい。ファーム巡りマップを作ったり、余った作物を融通したりしている。
土日は近隣住民だけでなく、オーガニックファーム巡りのために、遠出して来るお客さんで賑わう。
このスタイル、良いな~
考え方や志の似ている仲間が周りにいて、外の人たちが訪ねて来てくれる。
田舎の僻地にぽつんと面白いことをやっていたとしても、なかなか訪ねて来てくれないけど…
ファームとか工房とか宿とか面白いことをやる人の数が多ければ、農家カフェでご飯した後、野菜やクラフトをショッピングしたり、体験したり出来たら楽しいだろうな~
作物を育てている畑や、飼っている豚など、勝手に見て回れる。
イビキをかく豚ちゃんを発見 ↓
Demeterとは、ドイツの中で一番厳しいオーガニック認証。
バイオダイナミック農法を規定通りに実施していることが、認定の第一条件。
また、生産現場だけでなく加工や包装、流通にいたるまで細かい審査があり、各段階で生命の循環に悪影響を与えず、農産物の生命力を最大限生かす方法であるか監査される。
監査は不定期で、告知なしで行われるため、気が抜けないと言っていた。
またDemeterには二年間の研修制度もあり、バイオダイナミック農法を教え広めようとする働きもある。
参照HP→Demeter International
バイオダイナミック農法を学びたかった私たちにとって、
DemeterファームでのWWOOFは、願ったり叶ったり。
初日、さっそく蚤の洗礼を受けたけれども、へこたれない。
明日からどんな学びが待っているのか、期待でいっぱい。
→「バイオダイナミック農法 vol.2|理想と現実のはざまで踏ん張る人」へ続く
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