南印度の染メ織リ|コットンとインディゴを探す旅

インドの手紡ぎ・手織りの布、カディー (Khadi)。
人の手によって紡がれた糸は、細かったり太かったり、
素朴で温かい風合い、肌に気持ち良い。

インド独立の父・ガンディーがチャルカ(紡ぎ車)を携え、
糸を紡ぎながら反英闘争、独立運動が繰り広げられた。
世界史で習ったスワラージ(自治・独立)とスワデーシ(インド国産品愛用)、遠い記憶から手繰り寄せる。

チャルカで紡ぐガンディーさんの姿。(ネットより拝借)
チャルカで紡ぐガンディーさんの姿。(ネットより拝借)

衣食住における生活必需品を地域共同体で賄い、手工業を自分たちの手に戻すこと。
資本主義でも共産主義でもない、選択肢を説いた。

ガンディーの残した考えや言葉は、改めて驚くことばかり。
今なら、すとんと頭の中に入ってくる。
インドの手仕事を、ぜひこの目で見なくては。

マンガラギリ・コットン


マンガラギリは、アンドラ・プラデーシュ州にある小さな巡礼町。
町外れのオールド・マンガラギリまでひたすら歩いて行くと、
集落の中から、カッタン、カッタンと、小気味良いリズムが聞こえてくる。

音が聞こえてくる薄暗い小屋を覗くと、教室くらいの広さに所狭しと並ぶ地機たち。
織り機の下の地面を掘り下げ、掘り炬燵のようにすっぽり座って織っている。
裸足でペダルを踏み、飛び杼が左右に行き交う。

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小屋の様子。風は通るけど、薄暗い。

マンガラギリ・コットンは極薄で有名な高級綿織物。
1gの木綿から1m紡いだ糸を1カウントと数える。
マンガラギリでは40、60、80カウントの紡績糸を使っている。
手紡ぎだと細くても30〜40カウントだから、かなり細い。
1cmに経糸が30本以上入っているから、これは筬通し&綜絖通しが大変そう。
切れるといけないから、緯糸を水で濡らしながら織る。
(ベンガル地方で織られるモスリンは、髪の毛くらい細いらしいけど…)

最初見た時、小屋はゴミだらけだし、織り機には蜘蛛の巣張ってるしで、
…間違えたかな、と一抹の不安がよぎったけれど、
織子のおっちゃんが織り始めると、薄く繊細な布が超スピードで織りあがっていく。
真っ白な布でも、赤土の10cm上で織っていてハラハラする。さすがインド。

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黙々と織り続けるおじちゃん。上半身裸にルンギ姿が多い。

外国人が珍しいらしく、近所の人がどんどん集まってくる。
揚げ菓子やバナナのカメーカメー攻撃。
さらには、マンガラギリ新聞の記者がスマホ片手に現れ、
私たちを取材し始める騒ぎに。
ここはインドなのかと疑うくらい、恥ずかしがりで愛嬌いっぱいで優しい。

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ワガママ言って見せてもらった経巻き。ワイルドだけど、丁寧。

 

糸の染場も見せてもらう。

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化学染めで、温水法、冷水法。
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うず高く積まれた白い糸の中に埋もれる、黒いおいちゃん。
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糸を絞ったり、繰ったりする、黒光りする体軀隆々なおっちゃんたち。

男の糸染め、すごい迫力。

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いつもダルそうな表情のMohan氏。第一印象に反して、とっても優しくて親切だった。

最後に、真っ白なマンガラギリ・コットンを15m購入。
日本に帰ってから、何に仕立てようか考え中。
きっと夏にぴったりの涼しい一枚になるはず。

 

カルナータカ州の茶綿


南インドでは、カルナータカ州のカディー生産が一番多いらしい?
と聞いて、情報収集のため州都バンガロールにやって来た。
まだ一度も辿り着けないカディー・アシュラムを探してさまよい歩く。(インドのGoogleマップは、当てにしない方が良い。たとえ番地まで表示していたとしても、九割方正しい位置じゃない)

そんなこんなで諦めて、400ルピー(680円)もするステーキをやけ食いした帰り、
通りかかった公園にたれ幕、ピンクの綿あめを持った家族連れがわらわら。
アーチの文字はカンナダ語のみで何も読み取れないが、ガンディーさんの顔がデカデカと描かれている。
「もしかして!」
小走りに門をくぐり、入場料10ルピーを払う。
入口ではアンバーチャルカと高機の実演、中は布を山のように積み上げたのお店が連なっていた。
主にカルナータカ州&オリッサ州から来た、カディー組合の物産展ぽい。
カディーだけでなく、蜂蜜や革サンダルなど、特産品のコーナーもある。

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ひたすらアンバーチャルカを回す、お姉さん。。

その中で見つけた茶綿のカディー組合。
ダルワード郊外から来たのだそう。
織りもしっかりしていて、手触りも心地良い。
在来種の茶綿は病気になりにくいため、農薬や肥料が必要ないのだそう。
おっちゃんたちと会話するも、在来種か外来種かよく分からない。
でも、気に入ったため、5m買いました!

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調子に乗り、撮影会。

以前から、クルタを仕立てたいと願っていた達哉くん。
ベージュ色の渋いクルタが出来上がりました。
ダルワード行きたかったけど、今回は日程の関係で諦めました。
いつか茶綿畑を見に行きたいな〜。

タミル・ナドゥ州のインド藍


四代続くインド藍製造会社を営むアンバラガン氏。
インド藍は1000ヘクタールの畑で農薬も肥料も使わず育てられ、8〜9月に収穫期を迎え、すべて人の手によって刈り取られる。
その藍の生葉をプールにいっぱい敷き詰め、水を張って一晩沈められる。
発酵した藍葉からインディゴ成分が抽出され、水がどす黒くなる。
インディゴ成分でいっぱいの水だけを次のプールに移し、
発酵したその水を職人さんたちが二時間休みなく足でかき混ぜる。
その後、釜で煮詰め、トロトロの液体を濾し、木枠に注ぎ、重石をする。
水分を落とし、切り分け、天日干しで十日ほど乾燥させて…

やっと美しいIndigo Cakeが出来上がる。
これがすべて人の手で行われてるなんて、頭が下がります。

オーロヴィルのThe Colours of Natureでは、インド藍を発酵建てしている。
藍はもちろんアンバラガン氏の藍。
創始者Jesus氏は、インドの伝統的な染織技術がほとんど失われているのを目の当たりにし、
取り戻そうと奔走していたら、いつの間にか発酵や藍染にハマってしまったらしい。

消石灰とシード(バクテリアのエサとなる糖の役割として、茹でた何かの植物の種子)を使い、
苛性ソーダを使わない、昔ながらの藍建てをしている。
発酵具合は、匂いを嗅いだり、舌で舐めたりして測るらしい。
床に藍瓶が埋まっていて、建物は藍のいい匂いが立ちこめている。

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床に埋められた、1000ℓの藍甕。

「いつか、日本、台湾、ベトナムなどアジアの藍染職人が一堂オーロヴィルに会し、
それぞれひと瓶ずつ藍建てしながら、知識技術の共有&向上会をしたいんだ」
少年のように目をキラキラさせながら熱く語る、Jesus氏。
「それは素晴らしいアイデアですね…」熱意に押され、そう返すのがやっと。

「いやいや、本気だよ。これは私の夢なんだ!分かるかい?」
どんどん熱くなる。どうしよう。
私はまだペーペー。その熱意に応える力がないのが口惜しい。

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工房内の様子。

日本の藍染について、いろいろ聞かれる。
藍製造は、どれくらい手作業なんだろう。
苛性ソーダを使わずに藍建てしている所はどれだけあるんだろう。
製造所や染色工房、一つ一つでやり方違うだろうし。
研修で見学した琉球藍某製造所はスクリューで掻き回してたな。
藍草も、化学肥料使ってて、しょんぼりしてたな。
ちゃんと紺屋さん、見たことないしな。
帰国後の課題に…後回し。

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藍と碧色の小宇宙。

オーロヴィルで会った旅人さんに、良いことを教えてもらう。
「The Colours of Natureで藍染した生地を買って、
竹布を作っているBamboo Centreで服のオーダーメイド出来るよ〜」
真似っこして、藍染オーガニックコットンのシャツを仕立ててもらった。
幸せすぎるー!いい匂い!

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ご満悦〜♪

 

The Colours of Nature

南インドの旅も終盤。
あとは最南端カニャクマリのガンディー記念堂で、
ガンディーさんへ想いを馳せて来ます。

 

それにしても…
アンバーチャルカとか飛び杼を見ていたらと、
どこからどこまでが手紡ぎ手織りって言って良いのかな〜。
と、考え出してしまう。
インドに定義なんて必要ない気もするけど。logo sho-01

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