砂漠の国の旅|青い街、黄金の街とガイドのセクハラ
窓が閉まらない鉄道が、夜の荒野を走る。
砂を乗せた乾いた風が、容赦なく車内に入り込む。
夜の荒野と星空は、さぞかし綺麗なのだろうけれど、砂のせいで景色を見る余裕なんてない。
頭から布を被り、眼を閉じで目的地への到着を待つ。
髪はごわごわ。唇はカサカサ。顔はざらざら。
インド、ラージャスターン地方の旅は、砂と乾燥の思い出。
ブルーシティー、ジョードプル
ジョードプル。青く塗られた家々が立ち並び、青い街と呼ばれている。
街を見渡すと、確かに (まあまあ) 青い。
期待していた青一色ではなくて、普通にグレーや茶色があるけれど、それでも、広がる景色はとても綺麗。
路地を歩いていたら、青い外壁を、赤いペンキで思いっきり塗り替えている家があった。
「赤だよそれー!!いいの?」
「なにが?」
「ブルーシティーでしょ、ここ?」
「いいよ。赤い方が目立つし。」
さすがインド。なるようになってる。
景観を守ろうとか、無いのですね。
インドには、名前負けしないように頑張ろう!という類の気概が無い。
むしろ派手な名前を付けたもん勝ち。
安宿なのにゴールデンパレス。
ラグジュアリーバスは、シートが壊れてる。
No.1デラックスを名乗るレストランが町中あちこちにある。
なんともポジティブなネーミング。
さて、ブルーシティは街歩きが楽しい。
迷路のように入り組んだ路地は、歩く度に違う出会いがある。
ゴールデンシティ、ジャイサルメール
青い街の次は黄金の街。ジャイサルメール。
6年前の旅で立ち寄り、とても気に入ったので、祥と一緒に来たかった街。
「ゴールドじゃなくて黄色じゃん。」
こちらも名前負けしてる感はあるけれど、それはさておき、素晴らしい景色。
砂漠に囲まれた小さな街。
インドと西側の中央アジア、中東との貿易の拠点として栄えた街。その後、貿易ルートの分断で衰退した歴史もあり、中世の街並みが今でも残っている。
中心には高台の上に城があって、その中にも人の暮らしがある。宿やレストランも中にあって、どこも見晴らしが素晴らしい。
コンパクトにまとまっている中心部は、しばらく滞在していると顔見知りの人ができて、歩く度に声を掛けられる。
キャメルサファリとセクハラガイド
砂漠に囲まれているジャイサルメールの街は、ラクダに乗って砂漠に行くツアー、キャメルサファリが観光資源。多くの旅行者が、キャメルサファリを目的にこの街にやってくる。
街のあちこちでツアー会社が各自のキャメルサファリを売り出している。
各オフィスによって値段も内容も様々で、当たりはずれがあるので、何件か回って良さそうなツアーをしてくれそうなところを選ぶのだけれど、
やはりインド。謳い文句が信用できない。
どこのオフィスも口を揃えて、
「他のツアーでは行かない場所に行ける。」とか、
「どこよりも豪華な食事付き」
とか。
結局、内容は行ってみないとわからない。
僕たちの行ったツアーは、僕たち2人と、スウェーデン人の女の子、現地のガイド2人という5人のメンバーだった。
ラクダに乗って砂漠を歩き、砂漠で一泊キャンプして帰ってくるという内容。
砂漠の自然を楽しめたのは良かったけれど、それ以上に思い出はガイドによるセクハラのことが印象に残ってしまった。
夕食後、5人で焚き火を囲みながらガイドの一人(35歳)がそろそろ結婚をしたいという話に。
その時、持参したラム酒を彼に勧めたのが失敗だった。
普段お酒を飲まない彼は、ラム酒に口を付けはじめ、あっという間にできあがる。
開放的になってしまった彼。スウェーデン人の子にセクハラ連発。
二人で向こうに行こうと誘う。
マッサージと称し、触る。
寝ている彼女の横に近づき、ガン見しながら寝る。
その勢いは翌日ツアーが終わるまで続き、
俺の家に遊びに来ないか、バイクがあるから迎えに行ってあげる、いつだ、今日か?明日か?
やんわりと断り続けていた彼女、街に戻ると早速オフィスにクレーム。
翌日、呼び出しをくらった彼。仕事を干されてた。あぁ、どんまい。
インドでは、けっこうよく聞く話。
彼の出身の村は見合い婚が決まりで、結婚するまで会うことも触れることも許されない社会。
そこにやってくる開放的な外国人。
あまりに習慣が違うが為に生まれるいざこざ。
もともとその土地の暮らしがある中に、外からやってくる人やその価値観。
それが、地域をより良くすることもあれば、もとの暮らしを悪い方向に変えてしまうこともある。
外から入ってくる人たちも、受け入れる人たちも、お互いへの配慮が必要なんだなと、考えさせられた。
パキスタンと隣接したインド北西部の州。面積最大。カースト制度(憲法上は否定されている)や昔の風習が残っている地域が比較的多い。ブルーシティ、ゴールデンシティの他に、ピンクシティのジャイプル、ホワイトシティのウダイプル等も有名。