循環の中で暮らす人|アリエルとげんちゃんの暮らし Mexico × Okinawa
気がつけば、メキシコに来てひと月が過ぎた。
この時期は日没が遅く、夜九時頃まで明るいから、一日は長い気もするけど、一ヶ月があっという間に過ぎてしまった。
今回は自然に近い暮らしの話。
メキシコの中部にある大きな湖、パツクアロ湖。ほとりには小さな村がいくつも点在しています。
その中の一つエロンガリクアロという村の奥にアリエルのファームはありました。
2ヘクタール強の畑では、バイオダイナミクス農法に沿って、無農薬、無科学肥料でオーツ麦、小麦、トウモロコシ等を育てています。バイオダイナミクス農法というのは、星座や月の満ち欠け等の天体のリズムに合わせて作物を育てたり、大地のケアをしたりする農法のこと。
畑の隣にはヤギ、牛、カモたちの小屋。ヤギのミルクは自家製のチーズに。カモは卵を産むし、雑草処理の役目もあります。時々捌いて食べることも。
小屋の隣にはフリースクールも建設中。シュタイナー教育に基づいた学校をこの秋にオープンする予定。アリエル自身もシュタイナー学校に通っていた経験がある。土地の材料を使った建物の中で学んだり、畑で採れた野菜で料理をしたり、動物たちの世話をする。自然の循環のなかで学べる素敵な場所になりそう。
こうしたファームに加え、アリエルは村から少し離れた町に店舗を持っている。自身のファームの生産品に加え、他のファームの農産物や地元作家のクラフトを取り扱うお店。
店頭に立つ日もあれば、ファームで汗を流す日も。週末にはファーマーズマーケットに出店もするし、定期的に勉強会も開いている。今年の9月にはフリースクールをオープンさせる予定。やることは盛り沢山。
スペインがメキシコ統治を始める以前、先住民(プレペチャ族)が暮らしていた頃から、パツクアロ湖の豊かな水源に恵まれたこの地域は、農業や漁業が栄えていたそう。スペインの征服が始まった時も、プレペチャ族が地域を守るために戦ったため、メキシコの他の地域より文化が残っているし、スペインによる統治後も、有能な指導者によって農業を奨励された。
そうした背景のあるこの村に30年前、豊かな暮らしを求めて海外から多くの若者がやってきた。ベルギー、フランス、スイス、イタリア、アルバニア、ドイツ、、、。各国のヒッピー達が集まり、コミュニティが出来た。アリエルの父もその時に来た一人。だからこの地域は、オーガニック意識がまだまだ低いメキシコの中でも、有機的なライフスタイルに価値を見ている人たちが多いみたい。
そうは言っても、アメリカに近く、モンサントに浸食されているメキシコの農業事情。
巨大なビジネスの隣で営む小さなファーム。何か策はあるのだろうか?
「何故この暮らしを選んだの?」
「え?これがノーマルな暮らし方だからだよ。」
ごく自然で簡単な答え。
難しい理由なんてないんだよね。シンプルに良いものを扱うだけ。そっか。変な質問をしてしまった。
アリエルの生業は沖縄で暮らす仲間に似ていた。
「野菜屋元」のげんちゃん。沖縄で無農薬・無科学肥料の野菜を扱った商いをしている。
げんちゃんの生業はそれまでの彼の様々な経験があってこそ辿り着いたものだけれど、芯にあるものはシンプルなことだと思う。
「いいものを食べていたいから。美味いものを共有したいから。」
日本でもメキシコでも、少しずつ彼らのようなライフスタイルをする人が増えてきているし、もっともっと普及して欲しいと思う。
メキシコのアリエル(33才)と沖縄のげんちゃん(24才)、いつか二人がコラボしたら楽しそうだな。
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