ケチから学ぶこと vol.3|話し合い、そして…【ドイツWWOOF日記】
思い切って、ベンと話し合いをする決意をした。
だって、私たちは彼らの奴隷じゃない、対等な立場なはず。
交流の時間がぜんぜんないこと、もっと農法のこととか教えて欲しいし、一緒に作業したいこと。そもそもWWOOFの理念は、ファームとボランティアの双方に、お金を介さず、文化的で教育的な経験を提供する場であるべき。
労働時間が長すぎること。一日8時間超えてる日が続いていた。
家事をもう少し自分でして欲しいこと。せめて自分の洗濯物くらい、自分で干して欲しい。
と告げると、ベンは寝耳に水といった様子で、ムッとした。
「何が知りたいの?農法の方法論?まぁ、忙しいけど、時間作ってあげるよ」
「作業時間が長い?君たちの作業が遅すぎるからでしょ。他のWWOOFerより、たしかに丁寧だけど、遅いよね。しかも労働時間数えてるの?信じられない。以前のWWOOFerには、トイレとか洗顔の時間までカウントしてる奴がいたよ」
「休みは週一だよ。週に6日働くって言ってなかったっけ?」
「自分がトイレ使ったら、トイレの掃除くらいするでしょ?掃除とか家事とか全然しないつもり?こっちは忙しいし、ボランティアに家事も期待してるんだけど」
「WWOOFはファーム側にとってもメリットがないと。言っとくけど、本当のオーガニックファームはもうWWOOFなんてやってないよ。経験値のない素人ボランティアなんて必要ないんだから。君たちにどれだけの費用がかかっていると思ってるんだ?寝床に30ユーロ、食事に10ユーロくらいかかるだろう?」
私たちは唖然とした。
もちろんトイレの時間はカウントしてないし、
もちろん週一休みっていうのは初めて知ったし、
もちろんトイレの掃除はするし、むしろ台所片付けてるの私たちだし、
もちろん作業が遅いのを気になるのなら改善するけど、、
まさか、お金のことをこんなに嫌らしく勘定されると思わなかった。
まずメリットをお金と考えている時点で、すでに違う!
腹いせか、次の日とうとう、部屋のインターネットが切られた。
理由は、「部屋に引きこもってないで、もっと外に出て散歩でもした方がいい」
労働時間長くて、疲れてどこも行きたくないし、部屋でゆっくり休みたいのに。
あと数日滞在が残っていたけど、私たちはこのファームを出ることを決意した。
彼らが出かけている間、自分たちの自由時間をつかって、
台所、玄関、トイレ、シャワー、階段、私たちの部屋。
徹底的に掃除した。
掃除機をかけ、窓を磨き、水拭きし、整頓した。
その夜、ベンとヨアンナに、
「異文化同士、もっと伝え合わないといけないことを学ばせてもらい、ありがとうございました。良い経験になりましたが、やっぱり私たちはここを出ることにします、お世話になりました」と、丁寧に、礼儀正しく、伝えた。
返ってきたのは、「オッケー。ま、それが人生さ」という軽い答え。
「今回のことで、もっと他に言いたいことはないんですか?」と聞くと、
「うーん。明日からの作業、君たちと一緒にやる計画をもう立ててたんだけど、それを変更しなきゃいけない、ってことくらいかな」
再び、唖然。
なんでこの場面で、こんなことしか言えないんだろう。
滞在中、彼らの口から「ありがとう」や「ごめんなさい」が出ることは、ほとんどなかった。
次の日、早朝に家を出た。
クルムバッハ駅まで重いバックパックを背負って、山道含めて4kmくらい歩かなきゃいけなかったけど、
このファームを出られる喜びに比べたら、大したことじゃない。
ケチから学ぶこと
このファームで感じたことは、
出来るだけ多くTAKEしてやろうという精神。
暇さえあれば、何か頼まれる。
頼まれるというより、君たちのためだからと恩着せがましく言われる。
例えば、ブタの餌やりを頼むときは、
「君たちはせっかくファームに来ているんだから、ブタともっと交流した方が良いから」とか。
こちらが何か頼むと、出来るだけお金をかけないように済まそうとするし、
もったいぶって「君たちのために〜してあげる」ことを誇張してくる。
今日の出来事②
風邪を引いた達哉「風邪を引いたから、何か薬はないでしょうか」
ホスト夫「ケミカルな薬は良くない!身体にいいハーブティーを淹れてあげよう!」
それ、この前雑草取ってる時に抜いてた、そのへんの草やんけ。— tramp track 〜衣食住×旅〜 (@TrampTrack) 2016年9月6日
TAKE=あるものは全て利用してやろう、そんな心が見え隠れする。
ラウロ&アルフレッドのファームでは、誰もが自主的に動いていた。
ガラバトの散歩。みんなのご飯作り。家の掃除。どれも頼まれていない。
それは、彼ら兄弟のGIVEの精神が感じられたからだ。
十分な自由時間を与え、挑戦したいことは何でもさせてくれた。
畑で採れた野菜も、買ってきた食材も自由に食べてよかった。
夕陽を見に、ビールやお菓子を持って、見晴らしのよい丘へ連れて行ってくれたり。
近しい友人に紹介してくれたり、内輪のパーティーに連れて行ってくれたり。
大事に、古くからの友人のように、いろんなものを分け与えてくれたから。
受け取りすぎているから、もっと返したい。
自分に出来ることを、相手が喜ぶことを、返したい。
GIVEから始まり、GIVEを返す。
それが周りにも与え、伝わり、みんながGIVEをしだす。
GIVEの心が循環していた。
TAKEから始まると、こちらも出来るだけTAKEしてやろう、と考えるようになる。
相手からもらったもの以上のことはしたくないと思うようになる。
相手がケチだから、こちらもケチになって、損得で考えるようになる。
悪循環。
ベンとヨアンナのファームでの経験は最悪だったけれど、
ラウロ&アルフレッドたちのファームの素晴らしさ。自分たちへの戒め。
これからの暮らしを描くうえで、大事なことを気づかせてくれた。
いろんな場所でもらったGIVEの精神。
自分たちがまずGIVERになって、繋げていこうと思う。
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