生活の布|リトアニアリネンの秘密

リトアニアのリネンの歴史は古く、約4000年と言われています。寒冷地であるリトアニアは、リネンの原料となるフラックス(亜麻)が育つのに最適な気候。

だから、ほかの土地のリネンより、フラックス繊維が細く、長く、丈夫。

旧ソ連統治下の貧しい時代でも、首都ヴィルニュスには食料品よりリネンが多かったらしい。
リトアニアの家庭では、みんなリネンを使っていた。
衣服、ナプキン、タオル、テーブルクロスなど、人々の生活を支えてきたリネン。

次世代へ受け継ぎたいもの


首都ヴィルニュスを散策中、ふと窓の外から覗くと、
古い機織り機が何台も置いてある、織物工房を見つけました。

半地下に続く階段。足元の窓から織り機が!
半地下に続く階段。足元の窓から織り機が!

工房の名前は、“JURATE”(ユーラッテ)。
ハイカラなおばちゃん三人で立ち上げたそうだ。

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リトアニアの古の女神がモチーフ。
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ハイカラ三人組 (HPより)

「リトアニアの伝統リネンを、次の世代に残したい」
「家庭で代々使われてきた、丈夫で上質なリネンのことを知ってもらいたい」

そんな想いから、今でも手織りのリネンを生産している。

工房代表の一人、ヴァージニアはとても気さくで、色んな話を聞かせてくれました。

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彼女は織り子ではなく、創始者三人組の一人。写真を撮りたいというと、ノリノリで織り機の前に座ってくれた。

フラックスの種からリネンの布が出来るまでは、長い道のり。
毎年5月26日に種を蒔き、7月中旬に青い可愛らしい花が咲き、収穫の時期8月下旬には、黄金に色づくそうな。
繊維の特長を活かすため、刈り取らず根元から引き抜いて収穫するそうです。それを昔はすべて手作業、しかも女性たちの仕事でした。

そこから子供たちが、収穫したフラックスを畑で干し、種を取る。そして大人たちが、池にフラックスを約二週間浸し、硬い外皮を腐らせ、内側の繊維を取り出し、ほぐし、梳いて、選り分けます。
短く太い繊維は麻袋に、細く長い繊維は上質なリネンの布に。
紡いで、編んで織って、漂白してやっと出来上がり。

工房の中の様子。

 

古い道具も展示してあり、こんなエピソードを教えてくれました。(写真撮り忘れ…木製の太い棒の表面に凸凹がついている)
「リネンは織ったばかりだと硬いのよ。
洗ったら縮んでしまうでしょ。
だからこの道具で、引き伸ばしながらアイロンしたのよ。
あとね、この道具にはもう一つ大事な使い方があるの。
それはね…夜遊びする旦那を叩いて懲らしめるのよ!ふふふ」

「リトアニアには、古い歌の中にこんなフレーズがあるのよ。
♪フラックスの花のように青い眼に、
フラックスの糸のような黄金の髪♪
女の子の容姿のことね、そのくらい馴染みが深いのよ」

JURATEのワンピース
JURATEのワンピース (写真 HPより)

工房に少しだけ商品も置いてあったので、見せてもらいました。その中でも特に惹かれたのが、手織りのタオル。
手触りはさらっとしているのに、柔らかい温もりがある。

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すべて手織りのタオル。それぞれ織り方が違う。

この日ちょうど、整経に来ていた織り経験40年のお婆ちゃん。
彼女が織っているのだそう。
JURATEは、フラックスの栽培、紡績、織り、企画、製品、
すべてを自分たちで行っている。

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お婆ちゃんの道具。

 布はお薬、繊維の効能


本来、繊維の種類一つ一つには、意味や効能がある。
薬のことを外服薬、内服薬というくらいだから、
服は昔、薬だったと言われている。

麻の衣服には主に、リネン、ヘンプ、ラミーが使われる。
リネンはフラックス(亜麻)から、ヘンプは大麻、ラミーは苧麻(からむし)が原料。
それぞれ原料が違うから、特長もちょっとずつ違う。

最近、ヘンプが流行っているけれど、万能薬な訳じゃない。
繊維それぞれに向いている用途があって、力を発揮する使われ方がある。

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ショール (写真 HPより)

リネンは呼吸する素材と言われるほど通気性が高い。
湿気を吸収し、熱を逃がしながら体温調節をしてくれる。
また、吸水性、速乾性に優れているから、
木綿のタオルよりも清潔。
そして抗菌性が高く、汚れがつきにくく、落ちやすい。

そう考えると、リネンは台所や寝具など、
日常生活や肌に近い布だな、と思います。

タオルの一つ一つを手にとって、
「これはね、猫の足跡って意味の柄なのよ。
他にもいろんな伝統的な織り技術やパターン(柄)が、
いっぱいあるのよ。
それを残していきたいの」
と、工房の人たちは話します。

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猫の足跡柄のタオル。(写真 HPより)

日常生活のものだからといって、ただ織るのではなく、
いろんな模様を考えて、少しでも楽しくなるように。
リトアニアの女性たちは、織り込んでいったんだろうな。

暮らしのなかに、ちゃんとしたもの


機械織りの布と違って、表情のある布。
使う人を思い浮かべて織った、愛のこもった布。
手間ひまを惜しまなかった時代の、ちゃんとしたモノ。

日々の中に、ちゃんとしたもの、伝統のもの、を置くこと。
古いものを大事にするヨーロッパで、長く愛されてきたリネン。良いものを長く使う、そんな意識が根付いてると感じました。

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今回購入した手織りタオル (写真 HPより)

世界中でそんな意識が芽生えているのか、
最近では、いま話題のポートランドに出荷したりと、
あちこちで注目されてきているようです。

気持ちを豊かにする、生活の彩りとは何か。
将来の生活へのヒントが、また一つ増えました。logo sho-01

JURATE

2 thoughts on “生活の布|リトアニアリネンの秘密

  • 2016-01-07 at 3:34 PM
    Permalink

    Shoさん、私たち馬天ハーリーで一度お会いしたことが
    あるんじゃないかしら〜〜?

    いつも興味深い記事をありがとうございます。
    私もそんな旅してみたいなー。

    Reply
    • 2016-01-08 at 5:29 PM
      Permalink

      えー!?気づいてなかったの??笑
      一緒に二艘目漕いだよー!一昨年。
      エルサルバドルのププサの話とか、覚えてるよ☆

      読んでくれてありがとうねー!
      ゆみちゃんの好きな国or場所とか興味とか、ぜひ教えてね。私たちの視野も広がるので(*^_^*)

      Reply

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