手の温もり|バルトの愛され続ける伝統
憧れのバルトの国々
岡崎市のカフェで何となく手に取った、一冊の本。
『旅のコラージュ バルト3国の雑貨と暮らし』
ページをめくっていくと…、
ほっかむりを被ったお洒落なお婆ちゃんたち。
使い古された木の道具や、茅葺の古民家、伝統衣装でのお祭り。雪の結晶のような可愛い伝統模様が、
衣服、建物、小道具の至るところに施されて。
どっしりしていて、でも愛らしい。
そんな魅力に溢れていた。
それ以来、ずっと訪れてみたかった国々、バルト三国。
バルトの国には、今でも手仕事が生きている。
手編みミトン、リネン織物、籠編み、アイアンクラフト、陶器、ヒンメリ、木彫り。
民藝に近いものが見れるかもしれないと思ったら、
どうしても行ってみたくなってしまった。
それぞれ性格が違うバルト三国
バルト三国といっても、実は言語も文化も、それぞれに違う。
リトアニアとラトビアは、お互いを兄弟と呼び合うくらい仲が良く、似ている部分が多い。
リトアニアの方が兄貴分なのか、人々も面倒見が良くて優しくて、控えめで落ち着いている印象。
エストニアは、フィンランドなどのスカンディナヴィアの影響が強い。
今回訪れたのは、リトアニアとラトビアだけ。
その中でも、ラトビアで見たものを紹介します。
手編みのミトン
週末マーケットや道端の露店、雑貨屋さんやアーティスト。
色んな形で残っているクラフトたち。
驚いたのは、若いお姉さんからお婆ちゃんまで、年齢問わず、
女性たちが編み物をしているところをよく見かけたこと。
市場でも、街中の店先でも、たぶん家でも。
そして自分で編んだミトンや靴下を売る場所もあちこちにある。
ラトビアでミトンを二つ買いました。
街中のお洒落な雑貨屋さんだと、25~50ユーロくらいするけど、市場やフリマに自分で売りに来ているお婆ちゃんたちは、
模様など手の込み具合にもよるけど、8~17ユーロくらい。
何より編んだお婆ちゃんの顔が、直接見えて嬉しい。
全部可愛い~!と迷っていると、お婆ちゃんに笑われました。
伝統文化保存への取り組み
偶然訪問した織物組合、Tlms “Staļģene”。
ラトビア語とロシア語しか説明がなく、大半は分からなかった。
EUによる取り組みで、伝統技術の保存を目的としていて、
主にリネン織物、羊毛織物、ベルト織、編み物を教えているのだそう。
織ってみなさい!と手まねきして座らせてくれたり、
色んな織り方の布を見せてくれたり、あったかいところ。
沖縄の組合のみんなが恋しくなりました。
工芸博物館
やっぱり感動するのは博物館!
特に此処が良かった♪
ラトビアの首都リガにある、工芸博物館(Dekoratīvās Mākslas un Dezaina muzejs)。
リガ最古の建造物、聖ゲオルギ教会を改装した博物館。
黒ずんだ古い木の梁に、漆喰の壁。
なんだか日本の民藝館に来たような気分。
常設展では19世紀以降の織物、陶器、家具などを中心に展示。
もともとラトビアでは、ラトビア粘土で焼いた素朴な黒い陶器が主流だったが、近代に入って磁器の技術が中国から伝来したのだそうな。
壁のタペストリー。ずっと見てられる。
などなど。心ゆくまで堪能。
土産物と伝統のあいだ
日本でも、中米でもそう思ったけど、
博物館に収容されているような手仕事の大半は、
現在はお土産物と化していて、高価になって、
本来の意味も技術も形骸化しがち。
リトアニア、ラトビアでも、一部の伝統文化がそうなりつつあるのを、嘆いていました。
でも、毛糸の編み物やアイアンクラフトの風見鶏など。
少しずつ現代化しながらも、変わらず使われ愛されて、
日常の中にいるのを感じました。
バルトの本番は夏。
野外で、大人も子どもも伝統衣装を着て、歌って踊って、
大きな伝統のお祭りが開かれるそうな。
日本の盆踊りみたいな感じかな。
雪が舞うメルヘンな街並み、新月の夜には天然プラネタリウム。
そんな冬のバルトの国も好きだったけど、
いつかまた、夏に訪れたいな。