手の温もり|バルトの愛され続ける伝統

憧れのバルトの国々


岡崎市のカフェで何となく手に取った、一冊の本。
『旅のコラージュ バルト3国の雑貨と暮らし』

旅のコラージュ表紙
les deux 著、ピエブックス (2007)

ページをめくっていくと…、
ほっかむりを被ったお洒落なお婆ちゃんたち。
使い古された木の道具や、茅葺の古民家、伝統衣装でのお祭り。雪の結晶のような可愛い伝統模様が、
衣服、建物、小道具の至るところに施されて。

昔はみんな木の家だった。民家と家畜小屋とサウナがセットなところが多い。
昔はみんな木の家だった。民家と家畜小屋とサウナがセットなところが多い。

どっしりしていて、でも愛らしい。
そんな魅力に溢れていた。

それ以来、ずっと訪れてみたかった国々、バルト三国。
バルトの国には、今でも手仕事が生きている。

手編みミトン、リネン織物、籠編み、アイアンクラフト、陶器、ヒンメリ、木彫り。
民藝に近いものが見れるかもしれないと思ったら、
どうしても行ってみたくなってしまった。

ウジュピス共和国の小径
ウジュピス共和国の小径

 

それぞれ性格が違うバルト三国


バルト三国といっても、実は言語も文化も、それぞれに違う。
リトアニアとラトビアは、お互いを兄弟と呼び合うくらい仲が良く、似ている部分が多い。
リトアニアの方が兄貴分なのか、人々も面倒見が良くて優しくて、控えめで落ち着いている印象。
エストニアは、フィンランドなどのスカンディナヴィアの影響が強い。

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リトアニアの十字架には、雪の結晶のようなものが中心に入っている。

今回訪れたのは、リトアニアとラトビアだけ。
その中でも、ラトビアで見たものを紹介します。

手編みのミトン


週末マーケットや道端の露店、雑貨屋さんやアーティスト。
色んな形で残っているクラフトたち。
驚いたのは、若いお姉さんからお婆ちゃんまで、年齢問わず、
女性たちが編み物をしているところをよく見かけたこと。
市場でも、街中の店先でも、たぶん家でも。
そして自分で編んだミトンや靴下を売る場所もあちこちにある。

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ミトンのクリスマスツリー。

ラトビアでミトンを二つ買いました。
街中のお洒落な雑貨屋さんだと、25~50ユーロくらいするけど、市場やフリマに自分で売りに来ているお婆ちゃんたちは、
模様など手の込み具合にもよるけど、8~17ユーロくらい。

何より編んだお婆ちゃんの顔が、直接見えて嬉しい。
全部可愛い~!と迷っていると、お婆ちゃんに笑われました。

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市場かフリマ、直接交渉できるからいい。腕がいい女性のは、雑貨屋のと遜色ない。

伝統文化保存への取り組み


偶然訪問した織物組合、Tlms “Staļģene”。
ラトビア語とロシア語しか説明がなく、大半は分からなかった。

EUによる取り組みで、伝統技術の保存を目的としていて、
主にリネン織物、羊毛織物、ベルト織、編み物を教えているのだそう。

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織ってみなさい!と手まねきして座らせてくれたり、
色んな織り方の布を見せてくれたり、あったかいところ。
沖縄の組合のみんなが恋しくなりました。

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こんな大作がたったの100ユーロ…
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座ってごらん!やってごらん!
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5〜6枚綜絖の3D模様

情報→Tlms “Staļģene”

工芸博物館


やっぱり感動するのは博物館!
特に此処が良かった♪

ラトビアの首都リガにある、工芸博物館(Dekoratīvās Mākslas un Dezaina muzejs)。

リガ最古の建造物、聖ゲオルギ教会を改装した博物館。
黒ずんだ古い木の梁に、漆喰の壁。
なんだか日本の民藝館に来たような気分。

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もと教会だなんてわからないお洒落な外観
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1〜3階が吹き抜け。特別展が覗ける。

 

常設展では19世紀以降の織物、陶器、家具などを中心に展示。

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もともとラトビアでは、ラトビア粘土で焼いた素朴な黒い陶器が主流だったが、近代に入って磁器の技術が中国から伝来したのだそうな。

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木彫りが施された家具たち。寄木のものも何点か。

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これは棚の足。なんでこんないっぱい彫ったんだろう。
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ここにこのまま住みたい!

壁のタペストリー。ずっと見てられる。

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などなど。心ゆくまで堪能。

土産物と伝統のあいだ


日本でも、中米でもそう思ったけど、
博物館に収容されているような手仕事の大半は、
現在はお土産物と化していて、高価になって、
本来の意味も技術も形骸化しがち。

リトアニア、ラトビアでも、一部の伝統文化がそうなりつつあるのを、嘆いていました。
でも、毛糸の編み物やアイアンクラフトの風見鶏など。
少しずつ現代化しながらも、変わらず使われ愛されて、
日常の中にいるのを感じました。

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毛糸屋さんの前の街路樹や自転車は、こうなる。

バルトの本番は夏。
野外で、大人も子どもも伝統衣装を着て、歌って踊って、
大きな伝統のお祭りが開かれるそうな。
日本の盆踊りみたいな感じかな。

雪が舞うメルヘンな街並み、新月の夜には天然プラネタリウム。
そんな冬のバルトの国も好きだったけど、
いつかまた、夏に訪れたいな。logo sho-01

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