ブルームーンの下で|失われつつある文化と故郷。マヤの若者の言葉

グアテマラ。日本から見て、地球の裏側。

過半数がインディヘナ、マヤ民族。メルカドでは、スペイン語よりもキチェ語やツトゥヒル語、マヤの言葉が飛び交う。
大胆な文様の経緯絣の巻きスカートに、色鮮やかなウイピル(貫頭衣)を纏った女性たち。
よく日に焼けた、働き者の顔つき。控えめで穏やかな空気。

サンペドロ・ラ・ラグーナ。
アティトラン湖のほとりの小さな町で、達哉と一緒にスペイン語学校に通っている。

朝日の昇るアティトラン湖
朝日の昇るアティトラン湖

先生は22歳でツトゥヒル族のロビンソン。
頭の回転が速く、自分のルーツであるマヤの知識が広い。
歴史、暦、言葉。どれも大切に思っている。

「日本はどんな暦を使ってるの?閏年って何?」
「日本は歴史がある国だよね。もう失われた文化はある?それはなぜ?」

彼の質問には、答えるのが難しい。

ちょうど日本で、安保関連法案のデモが盛り上がっていたから、その話をした。
原発や米軍基地、震災のことも話した。
ロビンソンは真剣な表情で聞いていた。いくつか質問もした。

けれど、話が終わった後、何も言わなかった。
そのかわり、グアテマラのこと話してくれた。

スペイン統治で、言葉や宗教、いろんなものがマヤの人々から奪われたこと。

かろうじて言葉は残っているけれど、マヤ文字は消え、小学生くらいの年代からは喋れなくなっていること。

つい10〜20年前。まだ記憶に新しいマヤ民族虐殺について。
(最上先生のGE平和研究の授業で出てきたのを思い出した)

20%に満たないメスティーソ(スペイン人との混血)によって政治経済が握られていること。
そして今度の9月に大統領選挙があるが、候補者が全員メスティーソなこと。
候補の一人は数十年前の虐殺の引き金となった政治家の娘であること。
もう一人の候補は毛沢東の社会主義政治をマニフェストとしてること。

「目先のことだけ考えて決めたらダメなんだ。まずマヤ人から大統領が出ないとね」

悲しむわけでも、怒っているわけでもなく、ただ淡々と語った。

“それぞれ抱えているものがあって、必死に向き合っている”
そう言いたかったのかな。

Robinsonの住んでいるSan Juan村にて。こんな格好してるおじいちゃんがいっぱい。

心のどこかで、日本の話を聞いた人が、“それはひどい”と憤慨して欲しいと思ってたのかもしれない。

日本の理不尽さを話すことで、“誰か助けてくれるかもしれない”と、期待してたのかもしれない。

問題を抱えてない国なんて、どこにもないのに。

ロビンソンは、自分の土地を、文化を愛している。
自分に流れるマヤの血を誇りに思っている。

マヤ暦カレンダー、マヤの医療や宗教、国外に持ち出されたコデックス、トウモロコシのこと、そして村の暮らしなど。

「村では誰もが仕事をいくつも持ってるんだ。トウモロコシを育てるのが上手な人、話を聞いて人を元気にするのが上手な人とか、骨折を治す人とかね〜」

授業の合間に、熱く語ってくれた。

ロビンソン家族。お昼に招待してくれた。
ロビンソン家族。お昼に招待してくれた。

その土地に生まれること、血を受け継ぐことで、人は歴史を背負うんだと思う。

好きな所も嫌いな所も、全部。脈々と繋げられて来たもの。
背負うって言うと、重たいかな?
でも、地面に足をつけて立っているような気分になる。
ここが生きていく場所、ここが大好き。
でもまあ煩わしいことも多々(笑)
そんなのがホーム、故郷、帰る場所なんじゃないかな。

旅は、訪ねる土地で何も背負わない。だから、けっして同じ目線にはなれない。

相手の肩越しから見つめ、寄り添うだけ。
いいとこ取りで去らないように。

マヤの儀式を開いてくれた
マヤの儀式を開いてくれた

知らない場所に行って、知らないこと、知りたいものを知りたい。旅に出たい、ただその欲求があるだけ。

それは、自分に帰る場所があるから思えること。
どこにでも行けることが自由なんじゃない。
支えてくれる土地と人がいるから、自由に動ける。

遠く離れた地で、沖縄を恋しく思う。

血も歴史も背負っていないけど、懐かしく思う。
そこで生まれてなくても、ホームだと思える土地で、
その土地の人たちと一緒に向き合って生きていきたいな。

ヴァルナギータ、内田ボブさんの「そして旅が終わったら」
この曲を聴きながら、満月の下、うつらうつら考えてた。

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