古の風が吹く町|ウズベキスタン街歩き【ヒヴァ】
宿に飾ってあった一枚の絵。
いつかの時代のヒヴァの町。
城壁で囲まれた中に、建ち並ぶ土の家々と、そびえるミナレット(イスラム教の塔)。
塔から流れるアザーンに包まれて、穏やかな時間が流れる風景。
絵の中に描かれた、哀愁を纏ったのどかな町に惹かれて、 暫く滞在することにした。
観光地としてのヒヴァ
博物館都市と呼ばれるヒヴァ。
城壁に囲まれた町全体が世界遺産で、古い町並みが残されている。
宮殿やモスク、廟を目当てに観光客が訪れ、それらが集まるメインストリートには、レストランやお土産物屋が並ぶ。
「もっといいやり方無いのかな」
ヒヴァに着いてまず、メインストリートを歩いた時の感想。
町並みとか建物とか、場所に価値があって、人はそれを見に来るのに、
そこには安物のお土産が並んでいるというパターン。
観光地でありがちな展開。
残されている古い建物が、
日晒しの帽子やら、プリントの服やら、変なマグネットやら、埃を被ったポストカードやらに溢れていて、しかもツーリストプライス。
町や建物は、本来の使われ方をしている時が、一番魅力的だと思う。
使われる機能を変えるのであれば、それなりに工夫しないといけない。
「お土産を置くなら、せめて、ヒヴァの特産品とか、きちんとした物を置いてほしいよね。」
「観光客しか訪れないモスクって…。モスクとして開放されてて欲しい」
辛口なことを話しながら、通り過ぎた。
残されている暮らし
城壁内の人口は2600人ほど。
観光地といえど、客商売をしている人は一部で、多くの人は、そこに暮らしているだけ。
メインストリートから外れれば、すぐそこに人々の営みがある。
土のレンガを積み上げて、その上からまた土を塗って作られた壁。土の家が建ち並ぶ。
歴史ある大きな建物も貴重だけれど、受け継がれる人々の暮らしが、この町の一番の魅力だと思う。
木彫り職人の工房
町を歩いていて目を引くのが、木の扉や柱に細かく施された彫り。
モスクなどの建物だけでなく、民家にも、木彫りの窓や扉があったりする。
職人たちがノミと木槌でコンコンと彫っていく。
今でも工房が町のあちこちにあり、歩いているとその音が聞こえてくる。
本来の柱や扉の需要は少なくなり、最近は土産物の生産がもっぱら。まな板や、書見台(コーラン/聖典を置く台)が多いみたい。
それでも一応、木彫りの伝統技術は残っている。
工房には若い見習いたちの姿もあった。この先も、受け継いでくれたらいいな。
華やかで大きなサマルカンドに比べたら、ヒヴァは小さな町だけれど、それでも十分に魅力的。
流れる時間は、よりゆっくりと、心地よい。
城壁の向こうに夕日が沈み、土色だった町がオレンジ色に変わる。
あの絵の中の空気に触れることができた気がした。
info : ヒヴァ
首都タシケントの西750km。
古代ペルシャ時代からカラクム砂漠への出入口として繁栄した。 イスラームの聖都であるヒヴァの町は、外敵の侵入を防ぐ為、外壁と内壁の二重の城壁が作られた。内側の城壁に囲まれた旧市街(イチャン・カラ)には20のモスク、20のメドレセ、6基のミナレットをはじめとする数多くの遺跡が残されており、「博物館都市」として、 1990年、世界文化遺産に登録された。
*この記事は城壁内部(イチャン・カラ)のことについて書いてあります。