【後編】北イタリアの小さな暮らし|どこでどうやって生きて行こう?
《アオスタ渓谷》Valle d’Aosta
イタリアの田舎
週末、いよいよ念願のアオスタへ連れて行ってもらえることに。
ステファノーはお仕事があるので、1日遅れで到着。
ゆっくり電車が走るにつれ、景色に緑が増え、山が見えてきて空気も澄んでくる。
ステファノーの実家、フェーニス村(Fénis)に到着。
ステファノーのお母さんが、駅まで迎えに来てくれた。
てっきりステファノーのお家にお世話になるのかと思っていたら、
案内されたのは、天窓のついた可愛いB&B。
わーい!と喜んだのもつかの間、不安がよぎる。
「どどどどどうしよう、ここっておいくらでしょう?」
「大丈夫!今回は私たちのゲストだから。ここでゆっくり旅の疲れを癒して!」
本当ですか!?たぶん、この旅で一番良い宿なんじゃ…
ベッドメイキングされたフカフカのベッドに、ロマンチックなキャンドル。
星空の見える天窓。焼きたてのパン付きの盛り盛り朝ごはん。
夕食は、ステファノーいないけどステファノーの実家でフルコース。
サラダ、ローストビーフ、チーズ、グリッシーニ、ティラミス、エスプレッソ、グラッパ…
毎日、ご馳走の連続…。お腹がパツパツで眠りにつく。
アルプス文化圏
次の日は、朝早くからコーニュ村(Cogne)へ。
バスは、グラン・パラディーゾ国立公園という雄大な景色を横切って行く。
車酔い必至。
到着。モンブラン近いー!街がメルヘンで可愛いー!
この地域の伝統工芸のレース。
10cm編むのに2〜3時間…。
専門の学校があって、約350パターンの編み方を覚えさせられる。
なんと糸はヘンプ!麻文化がここにも!
6歳からレース編み始めた、大ベテランのおばさま。丁寧に説明してくれた!
そして、それを全部エリちゃんが訳してくれた 笑
ハイキングコースをお散歩。
アルプス文化圏に萌える
アルプス山脈の麓。フランス、スイスとも国境が近い。
だから、イタリアっていうよりアルプスっていう文化という印象。
やっぱり、文化圏と国境って微妙に違うんだなぁ。
フェーニス村の民俗博物館へ。
木、石、繊維、鉄のセクションから始まり、
生活用品、農耕用具、木工や籠など伝統クラフト。
月の暦を使っていたことにビックリ!
農業だけじゃなくて、木工分野でも。木を切る日、乾かすタイミング、削るタイミング、月の満ち欠けで決めてたのだそうな。
その後は、グラッパ工房へ。
グラッパとは、イタリア特産の葡萄の搾りカスを蒸留したお酒のこと。食後のエスプレッソに垂らしたり、そのままショットで飲んだり。
この地域特有のGenepyのグラッパ。原料の違いはもちろん、どこの村の蒸留所かで、味も香りも違う。
けっきょく6杯もテイスティングして、フラフラ。
同年代の夫婦と話して
滞在中、二人と色んな話をした。
とりとめない話、答えのない疑問、今まで興味のなかった話題。
住む場所が違うだけで、世界の見え方がこんなにも違うことに、改めて驚く。
実際に話してみて、初めて分かることの大きさよ。
最近、中央アジア抜けて中東と、言葉のわからない国で過ごしてきたから、尚更。
毎日に押しつぶされることもなく、周りを見て焦ることもなく。
二人で将来のことを話し合っていたのが印象的でした。
けっして深刻な雰囲気ではなく、
「自分たちで野菜を育てたいね」「日本に住むのもいいね」
と、可能性を提案し合う、ポジティブなやり取り。
お互いの良いところを尊重して、フォローし合っているのが伝わる。
いろんな環境を楽しめる、ステファノー。
四人で、夜のドゥオーモをそぞろ歩きながら、
「将来は、田舎に住みたいなぁと思っているけど…、僕はいまの生活も楽しいよ。ほら、このドゥオーモ、たくさんの彫刻があるでしょ。何度見ても、新しい発見があるんだ」
そして、イタリア語がまったく出来ないところから、今は地元民と世間話を交わすエリちゃん。
当初は辛いこともあっただろうに、そんなことはおくびにも出さない。
「私は人に恵まれてるんだと思う」と、向日葵のようにいつも笑う。
「イタリアはハーブを治療とかコスメに使うんだよ。エルボリステリアっていうんだけど、ケミカルじゃないハーブ薬しか売ってない薬局も、あちこちにあるよ。この前、チンキとハーブオイルの作り方を教わったんだー」
「イタリアにはGAS(※)って有機農産物とかお肉の共同購入のシステムがあって、そういうの良いなーって」
「イタリア人は、人生の楽しみ方が上手だと思う。仕事よりも、家族や大事な人との時間とか、楽しみとかを大事にする。優先順位がはっきりしてる」
土地にも、人の中にもとけ込んで、日々新しいものを吸収して。活き活きと楽しそう。
こんな姿を間近で見たら、こっちまで勇気がわいて、ワクワクしてくる。
再会出会い、これから
怒涛のように過ぎ去った、一週間。
何から何まですっかりお世話になってしまった。
もっと一緒にいたかったな、もっとゆっくり話したかったな…
名残惜しい。
いつかくれた言葉を、そっくりそのまま。私たちから二人にも贈りたい。
「遠く離れてもこうして似た価値観を持ち、信じることを忘れず新たな生活を切り開こうとする友達がいること誇りに思います。」
同年代からの良い刺激。本当にありがとう。
次に会える日を、心待ちにしています。
(※) 参照記事: GAS=Gruppo di acquisto solidale (有機農産物の人力共同購入グループ)
生産者と消費者をつなぐイタリアの購買システム「GAS」
スローなお買い物|フィレンツェ田舎生活便り2
フィレンツェの田舎から、こんにちは|ハレタル
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