ケルトの島|愛蘭土で見つけた古くて新しいカルチャーたち
ケルトの血を色濃く残すアイルランド。
いつか本で読んだ、農夫たちの描写に憧れて、
どうしても行きたかった国の一つ。
朝から晩まで農作業に明け暮れる、貧しい農民たち。
日暮れとともに一日の作業を終えると、
みんなでひとところに集まって、
火を囲み、各々楽器を手にセッション、歌って、踊った。
ケルト民族はヨーロッパの中で珍しく、
自然信仰や輪廻転生の宗教観を持っていた。
日本でいう、八百萬の神さまに似ている。
その後キリスト教が伝来し、カトリック信仰を取り込み、
混ざり合った。
よく見かけるハイクロスは、
太陽神と十字架が組み合わさったもの。
また、アイルランドは妖精と馴染みが深いことでも知られる。
日本の妖怪みたいな話がいっぱい残っている。
たとえば道路標識にも登場するレプラホーンは、
妖精の靴屋さん。
虹のふもとに黄金を隠していて、
捕まえるとお金持ちになれるんだって。
寒いけど島国気候。
土砂降りの雨の下にいるのに、隣町の頭上には晴れ間。
次々に虹が現れては、あっという間に消える。
昔からずっと、音楽や自然との距離感が近かったんだろう。
さて!今回の旅で紹介したいものが三つ☆
1✳︎Claddagh Ring✳︎
今回の一番の目的は、クラダーリングの結婚指輪を買うこと!
クラダーリングとは、アイルランドの最も伝統的な指輪。
王冠を戴いたハートを両手が支えるようなデザイン。
意味は、ハート=愛、両手=友情、王冠=忠誠、誠実。
“Let Love and Friendship Reign.”(愛と友情に支配させよ)
「クラダーリングを、昔ながらの職人さんから買いたい!」
と、意気込んでゴールウェイの街に乗りこみました。
ゴールウェイの街をぶらぶら歩いていたら、
古い店構えの宝飾店を発見!
1750年創業、Thomas Dillon’s。
アイルランドで一番歴史のあるお店だそうで、
狭い店内には、昔造られた指輪や写真が展示されていました。
多くの人はゴールドを購入していくそうですが、
私たちは一番安いシルバーを…。
お金に余裕がないのも理由の一つだけど、
日々の生活の中でも気軽に身につけられて、
年月とともに、傷がついたり、色が変わっていったり。
そんな指輪が、等身大で良いんじゃないかと。
→Thomas Dillon’s Claddagh Gold
2✳︎Handfasting✳︎
「その昔、キリスト教が伝来する前、ケルトの人々は、Handfastingという方法で結婚式を挙げたんだ」
と、※アンガスに教えてもらった。
※過去のブログ記事参照
花嫁がそれぞれ意味を込めた紋様や色を織り込んだ帯(Crios)を、
新郎新婦の繋いだ手に巻き、
立会人のもと誓いの言葉を交わしたそうな。
私たちは見つけられなかったけど、アラン島やゴールウェイ周辺に、まだ織子さんが残っているらしい。
結婚パーティーだけで、ちゃんとした式を挙げていない私たち。
ぜひともケルト式結婚式をしたかったけど、残念。
いつか自分で織って、日本で挙げたいな。
3✳︎Tweed✳︎
アイルランドでは、街からちょっと出ると、すぐに緑が広がる。
羊や馬、牛などが放牧され、のんびり草を食んでいる。
アイルランドの西地方は、古い石垣(トレリス)が残っていて、沖縄みたい。
羊は主に羊毛用。
アラン島伝統のセーターは有名だけど、北部のドネゴールではツイードが有名。
ツイードとは、手紡ぎの羊毛を、平織や綾織でキツく厚く織り上げた、粗い目の布のこと。
紡いだ時に違う色の毛が混じって、仕上がりが“霜降り”になるのは、アイルランドの特徴。
工房を見たくて、ドネゴールまで行ったけど…見れず終い。
冬の休日はお休みだったり、オフシーズンは閑散としていて閉まっているところが多い。
目的の工房も、漏れなくお休みでした。
手ぶらで帰るのも悔しいので、手織りツイードのブランケットを買うことに。
長い歴史と伝統を持つ「Studio Donegal」。北西のドネゴール地方Kilcar村。
機械化の進む現代で、技術の維持保存を掲げ、百年以上前もの創業時の製法を受け継いでいる工房。
家族経営で、何十年も仕事を続けてきた職人さんが織っているそうな。見たかった…(泣)
→Studio Donegal
最近、ツイードは重くてダサいって人気ないらしいけど、
有名ブランドとコラボして、お洒落なデザインの製品を作るという、新しい流れもある。
→BEAMS × MOLLOY&SONS
以上。
アイルランドは、寒くて物価も高い国だったけど、
不思議と心が温まる場所。
本物の農民セッションは見れなかったけど、夜な夜なあちこちのパブから音楽が溢れてくる。
音楽やゲール語、妖精、クラダーリング、アランセーターやツイード。
古いモノ達は、現代でも愛されて、息づいているように感じる。
(強いケルトのアイデンティティは、その心優しさは、
弾圧の悲しい歴史から来ているかもしれないけど…)
古いモノを守り続ける人々と、
ルーツに原点回帰していく人々と、
そこから現代のライフスタイルに合うように変化させていく新しい流れと。
そんな緩やかなシフトが起こっているように感じる。